まあFTだけど

ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す」早川文庫FT<amazon>。

やっと感想。
#SFっぽいのもあり、全然SFでないのもあり。通りでFTな訳だ。

最後かつ目当てだった「愛の手紙」は良かったんだが、他は結構良くないというか「嫌」だった作品多いというのが正直な印象。
時間が交錯するテーマの作品が多く収録されているが、過去を美化し賛美し、現在を否定するような内容の作品が多い。
特に表題作など、過去から続くものが現在起こっている変化に抵抗するにしても、その抵抗の仕方があまりにも露骨かつ悪趣味に思えて仕方がない。「クルーエット夫妻の家」も同様。
初版時の訳者あとがきがそのまま入っていて、「アメリカがこう(こういった古き良きアメリカ回顧趣味、あるいは現実拒否、空想への逃避な小説がよく読まれる)でいいのか」と書かれているがまあ激しく同意。
また、この時代(1960年代)に現代を否定されて、我々は一体どうなるのかと。書かれてから長い時間が経ったために同じ時代に対する印象のギャップがひどいですな。
時間交錯テーマの中で「愛の手紙」は特に過去を美化している訳でない(正確に言うと過去のその「時代」を美化している訳ではない)のでそういった不快感はないし、上と逆に書かれてから長い時間が経ったことで味わいが増している。オチも良い。
ただ、主人公の未来はあまり明るくないとは思いますが、でもそれは気にしちゃいかんのだろう。

「嫌い」であって作品自体の質は良いと思うので、この感想で引かれてももったいない気がする。でも私としては上記のように書くしかないのだよなぁ。
各作品の雰囲気自体が書かれてる時代という要素と併せて古風で、こういった調子の作品を読むのは久々で良い気分転換にもなったしね。

「まあFTだけど」への1件のフィードバック

  1. ジャック・フィニィといえば、『盗まれた街/SFボディ・スナッチャー』ですかね。でも、原作は読んでなかったり……邦題にSFと冠さなければいけないのかしら。この映画リメイクなのですが、ドナルド・サザーランド、レナード・ニモイ(ミスター・スポック)、若き日の蠅男ジェフ・ゴールドブラムなどが出演しています。救いがないエンディングはなかなか(・∀・)イイです。

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